
(written by ねぶくろ)
今から3年前の2023年2月
キャプテンとして乃木坂46を牽引してきた、最後の一期生・秋元真夏が卒業
これにより乃木坂46からオリジナルメンバーは全員姿を消す
グループアイドルにとって、世代交代は避けて通れない宿命だ
多くのグループがここで勢いを失い、物語を閉じていく
が乃木坂46は違った
今回は
「なぜ乃木坂46は世代交代に成功したのか」
その理由を
同年2023年にリリースされた3枚のシングルの歌詞から考察していきたい
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2023年3月
世代交代後、最初のシングル
『人は夢を二度見る』 がリリースされる
センターを務めたのは、
これからの乃木坂を背負っていく世代の筆頭となる
三期生・山下美月と久保史緒里だった
歌はこんな一節から始まる
もし僕がある日急に
世界からいなくなったら
どこの誰が泣いてくれるか
考えたこと 君もあるだろう
この歌詞に登場する「僕」は、
グループを去っていく卒業メンバー
そして「君」は、
その背中を見送り、これから乃木坂に残っていく
三・四・五期生のメンバーたち
続くフレーズ
夢をもう一度見ないか
叶うわけがないと あきらめた
あの日の何かを
ここには、二つの意味がある
ひとつは 「叶うわけがない」
夢そのものが、遠く手の届かないものだという諦め
もうひとつは 「敵うわけがない」
先輩たちの背中があまりにも大きく、
自分たちが主役になる未来を想像できなかったという現実
夢が遠かったのではない
夢の前に立つ存在が、あまりにも大きかった
若さは熱しやすく冷めやすく
目移りするだけで
とても大切なもの
見失ってしまうけれど
それでも 人は夢を二度見る
若さとは、可能性であると同時に、危うさでもある
昨日まで信じていたものを、今日には見失ってしまう
世代交代直後の乃木坂は、まさにその只中にあった
それでも、もう一度夢を見るのか、と
歌詞は最後に、こう締めくくられる
今ならちゃんと夢を見られる
この一行は、
「受け継ぐ側」であることに戸惑っていた彼女たちが、
自分たちが前に立つ番になったことを、受け入れた瞬間を表している
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夏、8月のシングルリリース
タイトルは『おひとりさま天国』
センターは、五期生・井上和
『人は夢を二度見る』で描かれたのは、
先輩たちのいない未来を前にしても、
それでも夢を見続けるという決意
では、その夢を胸にした彼女たちは、
次にどんな行動を選んだのか
続く『おひとりさま天国』は、
その問いに対する、ひとつの明確な答えになっている
慣れとは恐ろしい
なんだか寂しくない
むしろ最高 戻れない
It’s the single life
ここで肯定されているのは、
「ひとりであること」を恐れず、
それを選び取る選択
本当の自分でいられるから
もう大丈夫よ 放っておいて
この「もう大丈夫」という言葉は、
『人は夢を二度見る』で芽生えた覚悟が、
決して一時的な感情ではなかったことを、
はっきりと示している
夢はここで、
「受け取るもの」から
「自分で掴み取るもの」へと姿を変えた
その中心に立っているのが、
センター・井上和
圧倒的な「個」としての存在感
誰かの代わりではなく、
この場所に立つ理由を、自分自身で成立させている
『人は夢を二度見る』が
世代交代の始まりを告げる歌だとするなら、
『おひとりさま天国』は、
ひとりで立つことを選んだ
自立の歌だった
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そして12月
タイトルは『Monopoly』
意味は「独占」
センターは、四期生の賀喜遥香と遠藤さくら
この二人は、世代交代後の乃木坂において、
最も「顔」としての役割を期待されてきた存在だ
常に最前線に立ち、グループの現在地を体現してきた二人
だからこそ、『Monopoly』で描かれる感情は、
彼女たちが背負う立場そのものと重なっていく
冒頭で描かれる情景は、こうだ
線路沿いの道を自転車で走って
君を乗せた電車を追いかけた
今さら気づいてももう遅すぎるね
僕の知らないどこかへ行っちゃった
「君」は、またも卒業していった先輩たちのこと
それと同時にその先輩たちとともに離れていくファンの姿
必死に追いつこうとする
しかし、ファンは電車のように、あっという間に遠ざかっていく
その差は、どれだけ追っても埋まらない
この構図は、
世代交代後の中心に立つ賀喜遥香と遠藤さくらが、
最前線で感じてきた現実そのものでもある
背負うものが増えれば増えるほど、
手放さなければならないものも増えていく
追いついて間に合っても
何て声を掛けるんだ?
そう今日までの誤解を解く前に
君が好きだ
ここにあるのは、
「取り戻したい」という願いではない
追いついても
もう掛ける言葉は残っていない
それでも、
好きだったという事実だけは
否定しないでほしい
そんな切実な願い
愛は僕の monopoly
片想いの monopoly
独占とは、
誰かを縛ることではなく
もう応えてもらえないと分かっていても
この想いだけは手放さないという選択
失われていくものがある
追いつけないこともある
『Monopoly』が描いているのは、
離れていくものがある現実を受けとめること
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3枚のシングルが描いているのは、
実は世代交代の成功ではなく
夢をもう一度見ること
ひとりで立つこと
離れていくものがある現実を受けとめること
乃木坂46は、
世代交代を乗り越えたのではなく、
その痛みと一緒に前へ進んだ
だから物語は、終わらなかった
平坦な道ではない
それでも乃木坂46は、痛みを抱えながら
坂道を上り続けていく。
ねぶくろさんのnoteには、ドルオタ向けに書かれたコラムがまとめられています。今回のコラムは、その中のひとつです。
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